香りに包まれた日。

香りに包まれた日。

栴檀の花が咲いている頃でした。出身小学校に足を運んでみました。特に用事はなかったのですが、グランドを眺めてみようと思ったのです。近くに車を止めてグランドを歩きました。休日だったからでしょうか、誰もいませんでした。かすかに花の香りがしました。栴檀の木の周りにたくさんの咲き終わった花弁が落ちていました。白の中に紫をうっすら感じました。それらの花弁は音もなく落ちて来たものでしょう。大きな木はあの頃のままでした。大きな木の上には花がありました。小さな花でした。小さな花は風にあおられたのではなく、その働きを追えて静かに落ちてきたのでしょう。実のなる時期にはヒヨドリがやってきます。夏にはクマゼミが鳴いていました。その頃のことを思い出しながら歩きました。不思議なもので小学生時代に記憶が次から次へと心の中に湧いてきました。もしかしたらかすかな花の香りがそうさせたのかも知れません。五感の中で嗅覚は私たちの記憶を一番呼び覚ますと聞いたことがあります。そうかも知れません。あの場所で遊んだこと、ケンカしたことがまざまざとよみがえって来るのですから。静かなグランドを歩きながら栴檀の香りに包まれて、私は長い間グランドにいました。